入園式から学んだプロの仕事

今日は長女の入園式だった.うちの娘のいく幼稚園は古風な考えを持つところで,幼稚園は「お友達と仲良く遊び,過ごすところである」という考えがあり,今流行の「お勉強」や「習い事」がない.園長先生はこのようなご自身の考え方を保護者に入園前に丁寧に伝えており,考えに理解していただいたらウチに来てくださいという方針だ.そんな幼稚園の入園式は,手作り感あふれる園児中心の楽しいものだった.周りの父兄は子供をビデオで必死で取っていたが,しかし私は保母さんたちのその働きぶりに目を奪われていた.

主役を間違わない

今日の主役は園児である.父兄は脇役だ.当然だけれど,園長先生をはじめ保母さん達はそれを貫いていた.何組が何先生かの連絡も園児の方を向いて話されている.後ろに控えている父母を見ることはほとんどない(私達は式の前に貰った連絡の紙を見ていればよい).すべてのプログラムは園児と先生の間で回っていた.「園児をこちらに向かせる」ような親が喜ぶようなことすらなかった.これはすごいと思った.たいていの学校の式のプログラムは父母のためのようなものだけれど,今日の式は完全に園児のための式だった.なかなかできることではない.

聞き手の興味に合わせて自分の伝えたいことを伝える

幼稚園は式の中で園児に伝えたいことがいくつかあった.もっとも伝えたいのは「来週から幼稚園に来ましょう」だ.しかし,そんなことをしかめつらして話しても園児には伝わらないし,行きたがらないだろう.そういう伝えたいことを園児の興味を持つ方法で伝えていた.


例えば,「来週から幼稚園に来ましょう」を伝えたいときはこうだ.家をかたどったたくさんの紙の中に動物が隠れている.それをクイズ形式で当てていく.最後は園児と同じ制服を着たクマさんの登場だ.気がつけばクマの周りにはたくさんの動物さんがいて「お友達たくさんいるね」となる.クマさんは幼稚園に行くらしい.そこですかさず「みんなも幼稚園の服を着て,お友達がたくさんいるね.来週から楽しくみんなで幼稚園に行こうね」ということを伝える.みんな「はーい!」と元気に手を上げる.すっかりペースにはまっている.


そのあとも「幼稚園バッチ」と「連絡帳」をもってくることを巧みに伝えていた.幼稚園の保母さんってすごいなと思った.

園児につくす

園児に尽くすといっても,媚びているわけではない.ちょっとした寸劇や説明のための'遊び'をしながら園児の目線を貫いていた.あれはしんどいだろうと思う.でもしんどいそぶりはぜんぜん見せない.私は子供と遊ぶのが好きだし得意な方だからよくわかる.とても気を使う大変な仕事を,楽しそうにやっておられた.


私はソフトウェアプロジェクトのプロマネの卵だ.まだヒヨコですらない.しかし卵であっても,それなりの任務が与えられ,せめてヨチヨチでも歩ければなんとかなるはずのことを,卵なりにゴロゴロ転がりながら毎日の仕事をこなし目を回している.そんな卵が「仕事ってこういうことなんだな」って強く感じて自分の考えを改めさせられた.プロマネってヒトのマネジメントが大変でストレスたまるねなんて愚痴言っているけど,世の中には大変な仕事はまだまだたくさんあって,そういう仕事をされている方からは学ぶべきことがたくさんあるなと感じた.