「甘え」の構造

「甘え」の構造 [増補普及版]

「甘え」の構造 [増補普及版]

1950年頃,ロングセラーになった本らしい.私の手元にある本は,昭和53年発行で初版 105 刷だ.この手の本では凄いロングセラーなんじゃないかな.


さて,本書は医師である著者が「甘え」という概念について記した本であるが,医学的な見地だけでなく,言語学的,人類文化的な見地からも「甘え」について論じている.「甘える」という言葉は日本では一般的だし,「甘え」はよく見られる行動だが,英語で該当する言葉がなく一言では言えないらしい.著者はそんなところから,日本に定着している「甘え」という概念を解説していく.そしてさらに,実は全世界的な---人類共通の---振る舞いの根底に「甘え」がある事を示し,「甘え」というものがいかに人間の行動の根底に流れているかを解説する.


文章は平易で肩くるしくなく,読みやすい.「甘え」というものの深さ,面白さを感じる事が出来た.人間の行動を「甘え」という概念で分析できるというのが著者の主張だと思うが,いささか無理矢理に「なんでも甘えと結びつけよう」としている感は否めない.


それでも,著者の主張は面白く,一読の価値ありだ.